いよいよ最終日。2日目あまりに疲れすぎて携行食つまんだだけで倒れこむように寝てしまったので夜中にお腹が減って何度も目を覚ました。その度携行食つまみつつ降るような星空を堪能。綺麗な星空はいつまで見てても飽きることが無いですねー。生きてる間に手軽に現実的な値段で宇宙旅行出来るようにならないかな。
この日は赤岳で朝日を眺めて早めに下っちゃいましょう!ということで3時過ぎに起きて腹ごしらえしてスタート。前日あれだけ歩いて疲れきったので足のダメージとかヤバイいんじゃないかと思ってたんですが意外とそれほど疲れもなく快適。荷物が軽かったお陰でしょう。そんなわけでこの日も足取り軽くるんるんでスタートです!
コースタイム
8/9
赤岳鉱泉(4:00) – 行者小屋(4:30) – 赤岳頂上(6:00) – 阿弥陀岳頂上(7:50) – 行者小屋(9:30) – 赤岳鉱泉(11:00) – 赤岳鉱泉(12:00) – 八ヶ岳山荘(14:00)
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初日のダメージで元々悪かった膝の調子が悪化してしまったKsさんはこの日はお留守番。Kskさんと2人での行動。前日の小同心でちょっと手応えを感じてこの日は不安よりもワクワクのほうが上。さらに大同心正面壁雲陵ルートはフリーとしても5.9ぐらいの場所もあるそうなので相当楽しそう!
コースタイム
8/8
赤岳鉱泉(6:30) – 大同心基部(7:30) – 大同心の頭(11:30) – 硫黄岳頂上(13:00) – 夏沢峠(13:20) – 本沢温泉(13:50) – 本沢温泉(14:45) – 夏沢峠(15:30) – 硫黄岳頂上(16:20) – 赤岳鉱泉(17:30)
八ヶ岳山行初日。数日前からワクワクしっぱなしで顔を合わせては山の話ばかり。この準備してる期間も最高に楽しいですよね。
前日のうちに東京から八ヶ岳山荘の駐車場まで移動しておいて仮眠。6時に起きて出発だー。本当は美濃戸山荘とかのある辺りまで車で入ることが出来て1時間ぐらい歩かなくて済むんですが、夜暗かったのとレンタカーであの山道いけるの?ってのが若干不安で歩くことに。
この日の大きな目標は小同心クラックの完登。難易度的に困ることは無いと思っていたのですが、ロープを出してのアルパインは初なのと八ヶ岳の岩はとても脆いという話があったり僕よりも経験が少ない人達が2人一緒という事で不安要素は盛りだくさん。撤退することも視野にいれつつという感じでとりあえず出発!
この日の行動は以下のとおり。
コースタイム
8/6
夜発で美濃戸口 八ヶ岳山荘駐車場 仮眠
8/7
八ヶ岳山荘出発(6:45) – やまのこ村(7:30) – 赤岳鉱泉(9:15) – 幕営 – 赤岳鉱泉(10:30) – 大同心ルンゼ(11:30) – 大同心基部(13:00) – 小同心クラック取り付き(14:00) – 小同心の頭(16:00) – 横岳頂上(16:30) – 硫黄岳頂上(17:30) – 赤岳鉱泉(18:45)
8/7-9で八ヶ岳に行ってきました。八ヶ岳に行くのに2泊3日は長すぎてやることなくなっちゃうかな?なんて不安な気持ちが少しありましたが毎日毎日日が暮れるまで動きまわってまだまだやりたいことはそれこそ山ほどある。やることなくなっちゃうなんてアホな心配でした。
今回の目的のメインは「新たな山仲間と一緒に山を楽しむ」事だったので基本的にはのんびり山を歩ければいいよねー、なんて最初は話をしていたのですがクライマーが集まってただ歩くだけで終わるわけもなく、折角だからロープ出したいよね、じゃあアルパインも出来て土日組も合流しやすい山にしよう、じゃあ八ヶ岳?とあっという間に方針が決まり初日は小同心クラック、もし可能そうなら二日目は大同心(この時点では特にどこを登るのか決めてなかったが、結局登ったのは全部フリーで登れる正面壁雲陵ルート)、最終日はみんなで縦走という予定に。
3日とも快晴だったのもあって精力的に登りまくりの歩きまくりで初日12時間行動、2日目11時間行動、3日目10時間行動と途中大きな休憩もほとんどせずによくもまぁ動きに動いた三日間でした。街にいたら絶対こんなに歩けないと思うけれど、山にいるとまだまだ歩き足りないって思うから不思議。
食料に関しては実験的に極力食べずに行動したらどうなるのか、という事を試したくて
朝 棒ラーメン+カフェオレ
行動中 ウイダーの塩タブレット&バランスアップ1袋
夜 命の木の実(ドンキとかで売ってる奴)+M&Mを混ぜたもの一握りとフィッシュ&ナッツ一握り
とトータル1000kcal程度?に抑えてみたところ思っていた以上に動き続けられた。とりあえず水のんで塩タブレット摂っておけばさしあたり倒れこむようなことはなさそう。ただ、初日は街での蓄えがあったから1日特にエネルギー切れを感じずに動き続けられたけど2日目は最後の硫黄岳への登りが完全にシャリバテ状態できつかった。そんな状態になるまで追い込んだのに3日目の朝にはすっかり回復していて足がだるかったりは全く無かったのが不思議。なので行動食として持っていったものは大量に余った。
荷物の中で特別に減らしたのはシュラフ。ギア等があっていつもより重かったのと山離れが進んでいて体力的な不安があって少しでも軽くしたかったのとでテントとシュラフカバーで夜は突破することにしてシュラフはおいて行った。テントもツェルトにしようか悩んだけどそこはツェルトはるの面倒だったのでテントにした。とりあえず夜もそれほど寒くなく全く問題なし。
コースタイムは以下の通り。
8/6
夜東京発で美濃戸口 八ヶ岳山荘駐車場 仮眠
8/7
八ヶ岳山荘出発(6:45) – やまのこ村(7:30) – 赤岳鉱泉(9:15) – 幕営 – 赤岳鉱泉(10:30) – 大同心ルンゼ(11:30) – 大同心基部(13:00) – 小同心クラック取り付き(14:00) – 小同心の頭(16:00) – 横岳頂上(16:30) – 硫黄岳頂上(17:30) – 赤岳鉱泉(18:45)
8/8
赤岳鉱泉(6:30) – 大同心基部(7:30) – 大同心の頭(11:30) – 硫黄岳頂上(13:00) – 夏沢峠(13:20) – 本沢温泉(13:50) – 本沢温泉(14:45) – 夏沢峠(15:30) – 硫黄岳頂上(16:20) – 赤岳鉱泉(17:30)
8/9
赤岳鉱泉(4:00) – 行者小屋(4:30) – 赤岳頂上(6:00) – 阿弥陀岳頂上(7:50) – 行者小屋(9:30) – 赤岳鉱泉(11:00) – 赤岳鉱泉(12:00) – 八ヶ岳山荘(14:00)
細かい話は写真を交えつつ書いていきます!
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12/11:
ウキウキで会社を定時に飛び出して、猛然と家に帰った。
早く出発したいのもあるけれど、何よりも全く準備が出来ていなかった。
装備は9割借り物で、登山靴と50Lぐらいのザックだけ自前だ。
ヒョイと貸してくれたペコマに感謝。
来年の残雪期まで挑戦出来ないと諦めていた雪山にこうして向かえるのも全ては彼が装備を貸してくれたおかげ。
バタバタと準備を済ませ、出発したのは結局22時頃。今回の山行の目的は、正月の富士登山に向けて、雪山を歩くこと、特にアイゼンとピッケルに慣れる事。
高速に乗ってから、結局ピッケルを忘れた事に気がついた。大事な事なのでもう一度言うけれど、今回の目的はアイゼンとピッケルに慣れる事だ。
八ヶ岳の麓にある別荘に着いたのが24時過ぎ。
頭上には、雲ひとつ無い星空が広がっていた。本当に冬の八ヶ岳から眺める星空は凄い。なんて言って良いのかわからないぐらい凄い。宇宙に行けそうな気がするぐらい凄い。
軽く仮眠して4時に出発。目的地は赤岳鉱泉。作り始めたという話のアイスキャンディーも見たかったし、凄くメジャーな場所だから、人もいるだろうからきっと初めてチャレンジする僕にとって安全だ。それに、山頂までの距離が短いから、日の短い今でも山頂までいけるんじゃないかと思ってた。
ナビにセ「赤岳鉱泉」ってセットしてたどり着いた場所は、八ヶ岳の東側にある、謎の別荘地だった。
辺りを見回すと、一応登山道の入り口らしく、登山者用駐車場、と書いてある看板が見つかった(後で調べたところ、おそらく杣添・そまぞえ尾根への登山道読めなかった)。
車「私が手を貸せるのはここまでだ。後は君一人で進むんだ!」
ってことでしょうか。ナビがスパルタしてきます。
まだ日の出前だし、誰もこなさそうだし、どうしようかなー、と悩んでるうちに凄く大事な事に気がついた。
俺、地図持って無いじゃん。
今回の目的はアイゼンとピッケルに慣れる事であって、地図もなく見たこともない場所から初めての雪山に挑戦する、という人に言ったら自殺志願者としか思われないような行動を取るためではないので、赤岳鉱泉に行くことも諦めて、夏に一度通った真教寺尾根から登ることに。前回は清里駅からたかね荘までヒーヒー言いながら通った道も、今回は車なので楽勝です。
到着したら時刻は丁度6時過ぎ。空がようやく白んできました。
駐車場はさすがに除雪作業が行われたらしく、アスファルトが見えていた。安心して車から降りたらばっちり氷が張っていて転がった!これから雪と氷の世界に踏み出そうという一歩目にしてはあまりに不安です。
ともあれ、装備に着替えていざ出発です。最初のうちは雪も足首までも無いから楽勝でサクサクです。でも、久しぶりに重いリュックを背負って歩いてるから、歩いてはすぐに息が切れて立ち止まる。でも、こんな息切れも1時間もすれば歩くことに体が慣れて、調子よく進めるようになる。人間って凄いね。
少し歩くと羽衣池に到着する。羽衣池っていう素敵な名前があるけれど、少し開けた場所にちーさな池があるだけの場所です。いっくらあわてんぼうの天女も、さすがにここで水浴びしてたら危険なことぐらい気がつきそうなものです。
羽衣池を越える時、キュー、という感じの甲高い声が聞こえたので辺りを見回してみたら、鹿の親子が山の上に向かって走っていました。
山道はまだふんわりとした真っ白い雪に覆われていて、人の気配が全く無くて、想像していたよりもずっと良い場所だった。ふと振り返ると遠くには富士山や南アルプスをはっきりと見ることが出来た。
雪は常に足首から膝丈ぐらいまで積もっていたので、予想以上に歩くことは大変だった。普段歩く時に使わない場所を使っているらしく、しばらく歩いていたら、腹筋の下、各足の付け根付近がずっしりと重く感じた。
今回、人間では一番のりだったようで雪道には何のトレースも無い、まっさらな道だったのだけれど、この道を通るのは僕が初めてでは無いようで、あちこちに先客の足跡が残っていた。
たかね荘から牛首山山頂まで約3時間。予想していたよりも随分時間がかかってしまった。ちょっと赤岳の山頂まで行くのは難しいかもなー、と思いながら先を急ぐ。
前日の夜に引き続き、雲ひとつ無い快晴だったこの日、樹上に積もった雪が太陽に溶かされて、林の中はまるで雨のように雪解け水が降っていて、その水滴が太陽の光に照らされてキラキラと光り輝いていた。
理想は赤岳の山頂だったのだけれど、目標の一つとして、真教寺尾根を一望できる2400mぐらいのポイントへの到達があった。この場所に到着した時、時刻は11時過ぎ。予定していた下山開始時間だった。おそらく日没が5時頃なので、一日の真ん中は丁度12時ぐらい。帰り道はテンションが上がらずやる気が無い事を加味すると、だいたい11時~11時半が下山開始時間となる、という計算だ。
下山を開始した直後に、3人組のPTに出会った。
「トレースありがとうございました。お陰で随分早くここまで来ることが出来ました。」
初めてかけられた言葉だった。
ちょっと、山屋さんの仲間入りが出来たような気がして、ウキウキしながらの下山。
でも、僕も動物のトレースを追っかけてただけなんだよ!
開けた場所に来る度に進行方向に悩んでうろうろした跡がいっぱいあったはず、まさか一緒になって迷ったりしてないよなー、と思いながら降りていくと、僕が間違えてる場所はきっちり良い場所歩いてました。そりゃ、僕より経験が無い人なんてこの山にはいないよね。
帰り道は、下に行くほどに雪が完全に溶けて泥道になっていて、さらに熊笹の上に積もった雪を踏んではこけまくっていたけれど、予想よりも大分早く14時過ぎにはたかね荘に到着。行きが色々もたついたとはいえ5時間かけて進んだ道を3時間で降りてこられるというのはちょっと計算外。これなら山頂いけたんじゃないの?とつい思ってしまう。
でも、僕が下山を始めた直後辺りから南アルプスの方に雲がかかっていると思ったら、赤岳やその周りの山々の頂上付近から雲が湧き出して東側に攻め込もうとしていたので、そういう意味でも下山したのは正解だったかもしれない。
予想以上の快晴で、雪山を歩く、というよりはアイゼンを付けて雪道を歩く練習、になってしまった感があるけれど、誰も歩いていない雪道を歩くことが出来たし、凄く良い山行だった。
思ったことのメモ。
・汗核心 状況に応じた体温の調節
歩き始めてすぐに汗だくになってしまい、一番薄着だった時はTシャツでした。それでも汗びっしょり。常日頃から人の3倍以上の発汗がある僕としてはこれが多分一番の難題。雪山で汗かくとか、良い事一つも無い気がする。
・水分補給用の装備
ハイドレーションでもなんでも良いのだけれど、水分補給やちょっと軽食補給するたびにザックおろさないと荷物が出てこないのは効率が悪い。
・防水の小物入れ
上記を受けての話でもあるけれど、防水のカメラとか軽食とか地図をさっと取り出せる小物入れ(首からさげたりするようなイメージ)があると良いな、と。
崖の上から見える温泉は、都内で適当に人を捕まえて温泉のイメージを聞いたときに出てくるようなそれではなく、家の中にあるべき浴槽が何かのきっかけで外に飛び出してしまったような、そんな温泉だった。
はやる気持ちを抑えながら、温泉に向かう道を進む。まだ2,000mを越えているはずだが、すっかり辺りは草木の領土となり、「千と千尋の神隠し」で千が白に連れられて豚小屋に向かうときに通ったような、そんな道をゆっくりと下っていく。
少し開けた場所に到着し、辺りを見回すと看板を発見した。
特にこれといった施設も無いのだが、どうやら600円もかかるらしい。
だが、この道をそのまま温泉に向かったものの、料金を払うための何かが存在していなかった。
料金を払うためには、一度どこかに歩かなければならないのか・・・・。
軽いショックを味わいながら、丁度温泉から出てきた様子の親子に料金の事を尋ねると
「あ、ここから5分ぐらい歩いた山小屋に払うのよ~」
とおばちゃん。
がっくりと肩を落としつつもお礼を言い、来た道を折り返し始めたところ、後ろから駆け足で何かが近づいてきた。
何かと思って振り向くと、先ほどの親子の若い方(きっと娘だろう)がこちらに向かって走ってきた。
「あのっ、私達もう戻るので、お金代わりに払っておきましょうか?」
女 神 降 臨
その時僕の目には確かに光に包まれた笑顔が見えた。
最大限感謝の気持ちを伝えながらお金を渡すと、追いついてきたおばちゃんが
「あたしがちゃんと着服しないように見張っとくから!」
「そ、そんなことするわけないでしょ!」
良い親子だと思った。
ともあれ、直接温泉にいけるという事で意気揚々と温泉に向かい、5人ほどの列の後ろに座る。
近くで見ると、板の間(ここに靴を置いたり荷物を置いたり、服を置いたりする)、浴槽(畳2畳分ぐらい?)という構成で着替える場所などはやはり全く無いことが分かった。
お湯は乳白色で風呂に浸かっている人の体は全く見ることが出来ないが、出てきた人はその場で着替えているようだ。
女性はどうしてんのかなー、と思った矢先に浴槽から濡れ濡れのおばーちゃんが出現した。
装備品:スケスケTシャツ
あまりの事態に目が離せなくなる俺。
おもむろにこちらに背を向けたかと思うと膝を曲げずに足元に手を伸ばすおばーちゃん
強烈だった。
繰り返すが、装備品はスケスケTシャツだけだ。
その直後におじーちゃんも出現し、やはり濡れ濡れだったが、こちらはそれほど破壊力は無かった。
だが、このことは列に並ぶ人に話しかけるきっかけを作ってくれた。
このblogを始めるきっかけにもなったcreppさんと93さんとはこの時に出会った。
世の中、何がどう転ぶのかわからない。
風呂に入っている最中、自分が野宿であること、寝袋も無いことを話したのだが、周りの人たちの反応を見て、自分がいかに無謀な事をしているのか再認識することとなった。
しかし、この話は会う人とみんな仲良くなることが出来る。
昨日泊まったたかね荘では、オートキャンパーを眺めて指を咥えていたのだが、この辺りまで来ると初挑戦の気負いも抜け、自分が貴重な体験(やらなくて良いという人もいるかもしれないが)をしている実感がわいてきた。
僕はして良かったと思うし、興味がある人は宿泊するための道具を何も持たずに行ってみるのも良いと思う。
ただし、そこで何が起きても自己責任で。
僕が入っている間、両親と男の子が一緒にいたのだが、足の裏に砂利がついたままパンツを履くことを嫌がる子供にお父さんが一言
「寝袋もなしに”こんなところ”まで来てるおにいちゃんがいるんだぞ!少しは見習いなさい!!」
その後子供がぐずることは無かった。
れ、例に出るのはかまわないんですが、見習わせていいんでしょうか・・・。
風呂から出た後は寝る直前までcreppさんのテントの近くで過ごし、コーヒーをいただいたり、色々と話をするうちに、あっという間に時間が過ぎて行った。
本当に、楽しい時間が過ぎるのは早い。
いつか、僕の目の前に山を始めたばかりで何も道具が無いやつが現れたら、コーヒーをいれてやるぐらいの準備はしておこうと思った。
後、そんな場所に一緒に行けるパートナーも欲しいと思った。
本当はcreepさんのテントの横で寝ようかと思ったのだが、雨が降り始めたため、山小屋の横の屋根付きのベンチに移動。
雨はすぐに止んだのだが、丁度中秋の名月だったらしく、とても大きく丸い月が出ていて辺りが明るかったこと、川のすぐ横なので水音が聞こえたこと、鳥らしき泣き声が夜中の4時頃まで鳴り響いていた事とか、色々な原因で浅い眠りの中で夜をすごした。
ここから帰りの道は小さな秋を見つけながら、段々と重くなってきた足を一歩ずつゆっくりと進めていく作業だった。
全ての旅行においてそうであるように、行くときはどんなに遠くても気にならないのに、帰りは少しの移動でもとても億劫だ。
さらに、一度道を間違えた事も、疲れを増すのに一役買っている。
稲子湯という温泉に帰りに寄って、そこからはバスで電車の駅に向かう予定だったので、徒歩で移動するのは2時間、しかも温泉というご褒美付きのはずが、2時間歩いたら完全に下山してしまって、温泉どころかそこからさらに1時間半ほど歩いて電車の駅まで向かった。
小海線のうみじりという駅に着いたときは、感動とかそういう感情ではなく、沸きあがってきたのは安心感だった。
これで何があっても家に帰ることが出来る。そんな安心感だった。
こんなになりながらも最後まで僕の足を守ってくれた登山靴に感謝。
包帯は怪我とかではなく、登山靴のソールが取れてしまったので、固定のために巻いている。
と、ようやく書き終わりました。
ところどころ、読みにくい場所もたくさんあったと思いますが、初めての山登り、初めての縦走、その時の気持ちをそのままかけたんじゃないかなー、と思います。
山の中で出会った全ての人にありがとう。
元気な間はさほどではないのだが、こういう砂利道はやばい。
赤岳の山頂には、太陽が一番高い所から少し下がってきた午後1時。
山頂の横にある山小屋の前では皆が思い思いの岩に腰をかけ、お湯を沸かしたり、キュウリをかじったりしていた。
僕はというとカロリーメイトの一袋をあけ、水と一緒に飲み込んだ。
山の稜線は遥か前方に延び、人が歩く場所が白茶けた線となって山頂から山頂へと線を引いていく。
森林限界に到達しているのか、ある地点を過ぎると木と呼べるものはほとんど見かけなくなり、くるぶし辺りまで伸びている草すら稀になっていた。
青々とした下草と白茶けた岩とのコントラスト、それを包む空の青さが、その中に浮かぶ雲の白さがたまらなく美しい。
登り始める前に今夜の宿を、と考えていた赤岳鉱泉を探すと、遥か山の麓の方にそれらしき施設群を発見した。
どうやら、僕は大きな勘違いをしていたようだ。山から下りずに一晩過ごせる場所として、温泉のある赤岳鉱泉に目星をつけていたのだが、一度山を完全に降りなくてはならないらしい。
自分の勘違いであることを祈りつつ、コンパスと地図を見比べる。
残念ながら、今回は自分の勘違いではないようだ。
僕は地図をしまいこみ、肺から一度大きく空気を吐き出すとザックを背負いなおし、赤岳から1時間程のところにあり、
八ヶ岳の中で主峰赤岳に次ぐ高さを持つ横岳へと向かった。
今までの道中と違い、赤岳から横岳への道のりは心躍る岩場の連続だった。
一歩山とは逆の方向に足を踏み出したら、後はそのまま気持ちよく死ぬことが出来そうな、
そんな魅力的な崖が連続して存在していて、もし自殺したくなったらここに着てみようとか、
ここまで来てしまったらもう自殺するつもりなんてなくなっちゃうかな、とか考えていた。
それぐらい、吸い込まれそうな緑の絨毯だった。
いつしか僕も行き違う人たちと、自然に言葉をかけあうようになっていた。
「こんにちは」
「どちらまでいかれるんですか?」
「先に行ってください」
「どちらから?」
「良い眺めですね」
なんのことはない、ごく普通の言葉。
それらがお互いの存在を強く意識させる。
自分が言葉を発する生き物であることを思い出す。
あまりにも大きな存在の中で生まれる一種の連帯感だろうか。
ある岩場に差し掛かったときに僕は辺りが騒がしいことに気がついた。
うわー、とかあー、とか言う声が前後の人たちから上がる。
辺りを見回してみると、
太陽はまだ空の上の方にあり、僕の進行方向の左側、つまりは西側から、強烈な光を放っている。
右側は越えられない壁に苦しむ雲が僕の足元に広がっていた。
と、そのとき僕の影が何も無い空間の奥に向かって、歩き始めた。
実際には歩いていく訳がないのだけれど、自分の影が、何も無いはずの空間に投影されているのだ。
そして歩き始めた影の先端に丸く虹が生まれた。
一瞬の空白の後、湧き上がる感動。
僕の足はしばらく前に進むことを忘れ、手を伸ばせばそのまま虫かごにしまって
持ち帰れそうな景色に見とれた。
実は最初に一瞬現れた時には写真をとることを忘れてしまった。
もう一度、もっと鮮明に見せてくれたのはサービス精神旺盛な太陽のおかげか。
そこからさらに少し歩いた岩場の前で一息入れていると、そこで腰を下ろしていたおじさんに話しかけられた。
僕の倍ほどもあるザックをおろして、水分補給はそこから延びたチューブで行っていることから
彼がこの山に限らず登山を趣味としている人であることは容易にうかがい知ることが出来た。
「どこまでいくの?」
僕はこの質問が苦手だった。何故なら僕には目的地が無いから。
「どこまでいけるか考えてます」
こう答えると、若さをうらやむか、少し顔をしかめるか、どちらかの反応をして会話が終了することは
ここまでの経験で知っていた。だが、彼は違った。
「じゃあ、あんた若いから本沢温泉まで行ったら良いよ。
テン場もあるし、俺もそこいくから。ここからでも5時過ぎには着けるだろ。」
リミットの15時が迫ってきている中、目的地を定めることが出来ていなかった僕にとって
この言葉には大変助けられた。目標の一つとして候補には上げていたものの、
コースレコードを見る限りで日が暮れてしまうため、諦めていた場所のひとつだったのだ。
もう少し休むというおじさんに別れを告げ、進み始めた僕の足取りは思いの他軽くなっていた。
体力があるうちはどこまでいけるのかを考えながら進むのも楽しいのだ。
しかし、目減りする体力と、差し迫る時間とを考えながら目的地を定める、
それも全てが初めての場所で。
これには思いの他やられていたらしい。
その後もいくつか岩場を乗り越え、ようやく横岳に到着したのは行動のリミットとして
きつく言い渡されていた15時のことだった。
一応現実的な範囲で目的地も定まっていたし、山の経験者が大丈夫だと言うのだから、きっと大丈夫なのだろう。
ここから先、本沢温泉に至る道には八ヶ岳で3番目に高い硫黄岳(2,760m)があり、そこから一気に500メートルほど下った
2,150m地点に本沢温泉はある。
日本最高地点にある温泉なのだとか。楽しみだ。
周りの木々の葉に、空の高いところから落ちてくる水とがぶつかって奏でる音を聞いた。そのせいかどうかはわからないけれど、夜中の2時頃に一度目を覚ました。夕方には綺麗な夕焼けを見て、ほぼ完全な円となった月が出ていたのに、今雨が降っていることがとても不思議で、それと同時に自分に屋根のある場所を勧めてくれたおじさん、おばさんに感謝した。自分の体が雨に打たれていない事。それがとてもありがたかった。
そのまま寝なおして、次に目が覚めたのは周囲が段々と紺色から水色に近づく時間だった。5時半頃だっただろうか。昨日の朝は柔らかな布団に包まっていたのに、マットを一枚敷いた上に、上半身は長袖の綿のTシャツ、タートル、厚手のネルシャツ、ウィンドブレーカー、ダウンジャケット、下半身はナイロンのパンツ、ウィンドブレーカー、レインウェアという格好で寝転がっている。とても不思議な満足感があった。ちなみに、孤高の人を読んで実践した中身が空になったザックに足を突っ込むという方法は思いの他足を外気から防いでくれた。
頭は不思議と冴えていて、起きた直後には朝食の準備を始めた。朝食といっても玄米ブランを2枚とワカメスープとチョコレートだけれど。ステンレス製の器に水を張ってワカメのスープを沸かす間にタバコに火を着ける。タバコの先端から生まれる煙を眺めながら、朝の鮮烈な空気と山の音とに浸っていた。
暖かいワカメスープをすすり、朝食を終えた後は出発の仕度を始めた。思ったよりも気温が低くなかったが、これから上に上っていくことを考えて上下ともに長袖を着用し、残りの衣類や水をザックにつめ直す。荷物が少ないので5分程で出発の準備が整った。後、地図を見て羽衣の池を経由して真教寺尾根に入り、赤岳山頂に向かうことを確認した。
昨日自宅を出発する時はあれほどためらったというのに、山に登ることに全くためらいは無かった。
おじさんやおばさんが居れば挨拶がしたかったのだけれど、まだ辺りは完全に寝静まっていたために誰に言うでもなく感謝と出発の言葉を口にして歩き始めた。
しばらく歩くとすぐに羽衣池にたどり着いた。もう少し開けた場所を期待していたのだけれど、池というほどの水も見当たらない場所だった。季節を選ぶともう少し羽衣感があるのだろうか。タイトルは忘れてしまったけれど、天女が空から降りて水浴びしているところに出くわして、天に戻って欲しくないから木にかけてあった羽衣を隠してしまった、とかいう昔話があった気がする。そういう意味ではあんまり開けてなくて周囲に木が生えている池の方がいいのか。
まだ15分程度しか歩いていないのに、暑くて汗をかき始めてしまい、丁度荷物を降ろせる場所があったので羽衣池の横で上着を脱いだ。自分の中ではとても早い時間で、そんな時間に人はあまり活動していないだろうと思っていたのだけれど、着替えが終わった時点で同年代か少し上ぐらいのカップルが通過、荷物もつめ終わって一服していたらおじいちゃんおばあちゃんの集団が到着。方言から判断するに広島から来ているようだ。昨日清里の駅周辺で一泊して5時頃出発してきたらしい。山を登る人たちの活動時間は早い。
話をしているうちに昨日たかね荘に泊まった話をすると「それでそんなに荷物が大きい」とか言われてしまい、特に何もキャンプ道具が入っていないことを言い出せなかった。さらに、おじさんの1人に「ちょっと持ってみてもいいですか?」と言われたので持ってもらうと少し驚いた表情で「意外と軽いね~」と言われてしまう。それに対して、その集団のリーダー格の人が今の山道具はどんどん進化してとても軽いという事を説明していたが、ごめんなさい、何も道具が入ってないから軽いんです。
山歩きのペースがつかめていなかったのでだらだらとことさらに意識してゆっくり登ろうと思っていたのだけれど、おじさんおばさんに若くて早いだろうから先に行っちゃってね、と言われて山のぼりが初めてであることも言い出せなくなり、先に出発することに。当面の目標は賽の河原という場所を経由して牛首山の山頂だ。
登り始めると、鬱蒼と茂る笹が道の両サイドからはみ出しており、昨夜の雨の影響もあってか足周りが大分湿ってしまった。次からこういう場所を通過するときは気にしなくてはいけない。地面には真っ白なムカデのような生き物が大量にいた。ちょっと異常な発生量だと思うのだけれど、普通なのだろうか。
基本的には先行する僕をおじーちゃんおばーちゃんが追いかける形なのだけれど、僕が休憩してタバコに火をつけると、吸い終わらないうちに追いつかれる。これには少なからず驚いた。それほど体力があるほうだとも思わないけれど、おそらく50は越えているだろうおじいちゃん達にほとんど差をつけることが出来ないのだ。さすがに歩いていると追いつかれることはないのだけれど。
賽の河原に到達した。名前から細かい石がたくさんある場所を想像していたのだが、大きめの石がゴロリといくつかある程度でほとんどは土だった。そこの端にまるでパックンフラワーのような巨大なアザミが花を咲かせていた。八ヶ岳に咲くアザミは全てこのサイズなのかと思ったが、後で普通のサイズのものも見かけたので、大きいサイズの種類があるようだ。
どうにか追い抜かされる事無く牛首山の山頂まで到達した。その頃ようやく雲が切れ始め、空は綺麗な青色を見せ始めていた。辺りはまだまだ木が豊富に生えていて、上を見上げてもあまり空を見ることは出来なかったのだけれど、それでも見上げた時にあの青さを見ることが出来ると気持ちが良い。
牛首山の山頂に到達したのが7時30頃。歩き始めて1時間半が経過していたので一度大きく休憩を入れようと荷物を降ろしたところで例の集団に追いつかれた。彼らもここで一度大きく休憩を入れるらしい。リーダー格のおじいちゃんがおもむろにコッヘルと鍋を取り出してお湯を沸かし始める。それぞれにおにぎりやサンドイッチを取り出し始めた。どうやら、朝食のようだ。とても羨ましい。
15分ほど休憩を入れて再度歩き始める。地図の等高線を見る感じであまりアップダウンの無い道を進んでいくのかと思ったら、細かいアップダウンがある。一度登ったのに下るのは少しもったいない気がする。
前回登った富士山は6合目以降ほとんど草木が生えておらず、頭を少し左右に動かせば空を眺めることが出来たのだけれど、ここではそうはいかず、ところどころ崖のような場所を通過するときに空を見ることが出来るものの、ほとんど草木に覆われた道を歩くことになる。自分の来た場所、進んでいく先がわからない道を歩いていくのは少しつらい。さらに、景色がほとんど変化しない。
少し立ち止まって水分補給したりすると後ろから聞こえてくる広島弁に追い立てられるように前に進んでいたら、いつの間にか周りの木々の背が低くなっていたことに気がついた。アップダウンを繰り返すうちに高度が上がっていたらしい。そのことに気がついた直後、視界の開けた場所に到着した。久しぶりに頭上に空が広がる。
ふと後ろを眺めた時、自分がとても長い距離移動していることに気がついた。移動してきた場所が山の形をしていることがとても不思議だ。左から来た雲が山に遮られて右側に進めずにいる。遠くから見ると山という塊でしかない存在が、その中にいるときは地面と、木々の幹としか感じることが出来ない。
ついに見えた赤岳の頂上や、横に見える権現岳から赤岳に至る尾根や、自分が歩いてきた尾根。そして木々の緑、雲の白さ、空の青さがあまりに綺麗でこの場所で15分ほど休憩をしていた。その間におじーちゃん達には抜かれてしまった。でも、自分の歩いてきた道を見下ろし、風に吹かれて太陽の光を浴びているのがとても気持ちよくて、動くことが出来なかった。休んでいる間にもう1人、40ぐらいのおじさんがここの景色はすばらしいですね、といいながら通過していった。
ここから先は、進むほどに道は細く険しくなっていった。ただ、幸いにも天気が良かったので見上げれば青空を見ることが出来たし、岩場が増えてきたので徐々にテンションは高かった。
ようやく赤岳の山頂に到着したのは12時55分。ほぼ地図に書かれているコースレコード通り。景色に見とれている時間を考えれば、コースレコードよりは早いペースで歩いているのだろうと思う。