煙と馬鹿と俺 2.1


[mountaineering] 槍穂高連峰ぐるり一周
9月 28, 2010, 2:43 pm
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北穂からの日の出
書くのが随分遅れてしまいましたが、8/20から2泊3日で北アルプスに行った記録です。去年はソロで上高地から梓川沿いに槍ヶ岳に上がって前穂高岳、岳沢を通って一周したので、今年は逆回り。さらに縦走では初めて人と一緒の山行です。

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八ヶ岳縦走(2日目 本沢温泉 – 3日目 うみじり駅)
12月 30, 2008, 3:45 pm
Filed under: mountaineering, 八ヶ岳 | タグ: , ,

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崖の上から見える温泉は、都内で適当に人を捕まえて温泉のイメージを聞いたときに出てくるようなそれではなく、家の中にあるべき浴槽が何かのきっかけで外に飛び出してしまったような、そんな温泉だった。

はやる気持ちを抑えながら、温泉に向かう道を進む。まだ2,000mを越えているはずだが、すっかり辺りは草木の領土となり、「千と千尋の神隠し」で千が白に連れられて豚小屋に向かうときに通ったような、そんな道をゆっくりと下っていく。

少し開けた場所に到着し、辺りを見回すと看板を発見した。
特にこれといった施設も無いのだが、どうやら600円もかかるらしい。

だが、この道をそのまま温泉に向かったものの、料金を払うための何かが存在していなかった。
料金を払うためには、一度どこかに歩かなければならないのか・・・・。
軽いショックを味わいながら、丁度温泉から出てきた様子の親子に料金の事を尋ねると

「あ、ここから5分ぐらい歩いた山小屋に払うのよ~」

とおばちゃん。
がっくりと肩を落としつつもお礼を言い、来た道を折り返し始めたところ、後ろから駆け足で何かが近づいてきた。
何かと思って振り向くと、先ほどの親子の若い方(きっと娘だろう)がこちらに向かって走ってきた。

「あのっ、私達もう戻るので、お金代わりに払っておきましょうか?」

女 神 降 臨

その時僕の目には確かに光に包まれた笑顔が見えた。
最大限感謝の気持ちを伝えながらお金を渡すと、追いついてきたおばちゃんが

「あたしがちゃんと着服しないように見張っとくから!」
「そ、そんなことするわけないでしょ!」

良い親子だと思った。

 

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ともあれ、直接温泉にいけるという事で意気揚々と温泉に向かい、5人ほどの列の後ろに座る。
近くで見ると、板の間(ここに靴を置いたり荷物を置いたり、服を置いたりする)、浴槽(畳2畳分ぐらい?)という構成で着替える場所などはやはり全く無いことが分かった。
お湯は乳白色で風呂に浸かっている人の体は全く見ることが出来ないが、出てきた人はその場で着替えているようだ。

女性はどうしてんのかなー、と思った矢先に浴槽から濡れ濡れのおばーちゃんが出現した。

装備品:スケスケTシャツ

あまりの事態に目が離せなくなる俺。
おもむろにこちらに背を向けたかと思うと膝を曲げずに足元に手を伸ばすおばーちゃん
強烈だった。

繰り返すが、装備品はスケスケTシャツだけだ。
その直後におじーちゃんも出現し、やはり濡れ濡れだったが、こちらはそれほど破壊力は無かった。

だが、このことは列に並ぶ人に話しかけるきっかけを作ってくれた。
このblogを始めるきっかけにもなったcreppさんと93さんとはこの時に出会った。
世の中、何がどう転ぶのかわからない。

 

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風呂に入っている最中、自分が野宿であること、寝袋も無いことを話したのだが、周りの人たちの反応を見て、自分がいかに無謀な事をしているのか再認識することとなった。
しかし、この話は会う人とみんな仲良くなることが出来る。
昨日泊まったたかね荘では、オートキャンパーを眺めて指を咥えていたのだが、この辺りまで来ると初挑戦の気負いも抜け、自分が貴重な体験(やらなくて良いという人もいるかもしれないが)をしている実感がわいてきた。
僕はして良かったと思うし、興味がある人は宿泊するための道具を何も持たずに行ってみるのも良いと思う。
ただし、そこで何が起きても自己責任で。

僕が入っている間、両親と男の子が一緒にいたのだが、足の裏に砂利がついたままパンツを履くことを嫌がる子供にお父さんが一言

「寝袋もなしに”こんなところ”まで来てるおにいちゃんがいるんだぞ!少しは見習いなさい!!」

その後子供がぐずることは無かった。

れ、例に出るのはかまわないんですが、見習わせていいんでしょうか・・・。

風呂から出た後は寝る直前までcreppさんのテントの近くで過ごし、コーヒーをいただいたり、色々と話をするうちに、あっという間に時間が過ぎて行った。

本当に、楽しい時間が過ぎるのは早い。
いつか、僕の目の前に山を始めたばかりで何も道具が無いやつが現れたら、コーヒーをいれてやるぐらいの準備はしておこうと思った。
後、そんな場所に一緒に行けるパートナーも欲しいと思った。

 

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本当はcreepさんのテントの横で寝ようかと思ったのだが、雨が降り始めたため、山小屋の横の屋根付きのベンチに移動。
雨はすぐに止んだのだが、丁度中秋の名月だったらしく、とても大きく丸い月が出ていて辺りが明るかったこと、川のすぐ横なので水音が聞こえたこと、鳥らしき泣き声が夜中の4時頃まで鳴り響いていた事とか、色々な原因で浅い眠りの中で夜をすごした。

 

 

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ここから帰りの道は小さな秋を見つけながら、段々と重くなってきた足を一歩ずつゆっくりと進めていく作業だった。
全ての旅行においてそうであるように、行くときはどんなに遠くても気にならないのに、帰りは少しの移動でもとても億劫だ。

さらに、一度道を間違えた事も、疲れを増すのに一役買っている。
稲子湯という温泉に帰りに寄って、そこからはバスで電車の駅に向かう予定だったので、徒歩で移動するのは2時間、しかも温泉というご褒美付きのはずが、2時間歩いたら完全に下山してしまって、温泉どころかそこからさらに1時間半ほど歩いて電車の駅まで向かった。

 

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小海線のうみじりという駅に着いたときは、感動とかそういう感情ではなく、沸きあがってきたのは安心感だった。
これで何があっても家に帰ることが出来る。そんな安心感だった。

 

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こんなになりながらも最後まで僕の足を守ってくれた登山靴に感謝。
包帯は怪我とかではなく、登山靴のソールが取れてしまったので、固定のために巻いている。

 

 

と、ようやく書き終わりました。
ところどころ、読みにくい場所もたくさんあったと思いますが、初めての山登り、初めての縦走、その時の気持ちをそのままかけたんじゃないかなー、と思います。

山の中で出会った全ての人にありがとう。

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八ヶ岳縦走(二日目 硫黄岳登頂ー本沢温泉到着)
11月 17, 2008, 4:22 pm
Filed under: mountaineering, 八ヶ岳 | タグ: ,

横岳を通り過ぎると、先ほどまでの岩場とはうって変わって大粒の砂利(山の下なら岩)道に突入した。
元気な間はさほどではないのだが、こういう砂利道はやばい。
一歩進むごとに足が重くなり、体力を削り取られる。
さらに困ったことに、ただ歩くといった雰囲気に、テンションが全くあがらないのだ。
先ほどブロッケン現象を見た興奮はどこへやら、重くなり、徐々に痛みが出てきた膝をきにしつつ
目の前になだらかに広がる硫黄岳の山頂を目指す。
足元ばかり見て歩いていることは、悪いばかりではないようだ。
道端にポツリと記された鮮やかな赤。
辺りに仲間は全く見当たらず、ただ1人、存在を主張している者が在った。
後で調べたところ、どうやらコマクサという植物のようだ。
説明には「硫黄岳から横岳にかけて多く・・・」と書いてあったが、
季節のせいか、辺りに仲間は見当たらなかった。
久しぶりの日差しに、気が急いてしまったのだろうか。
そうこうするうちに、遠くに小さく見えていた山小屋が、いつの間にやら目の前にあった。
まだ時刻は3時30分。
雲が出てきたようで、急に気温が下がり、太陽の恩恵が遥か頭上で跳ね返され始めた。
じっとりと汗に塗れたシャツを替えるべく、山小屋に立ち寄った。
道から少し階段を下りて山小屋の前に到着すると、既に宿を決めたらしい登山客が
最後の日差しを浴びて談笑しながら美味そうにビールを飲んでいた。
さすがに、目指す本沢温泉までまだ2時間近い行程を残している身としては
ビールを飲むわけには行かなかったが、ここまでの慰労も兼ねてコーラを購入。
これだけはやめられない。
山の上で飲むコーラの味。
今なCMに出ている誰よりも良い顔で飲んでいる自信がある。
そして何故こうもタバコが美味いのだろうか。
しばらく腰を落ち着けて、ふと上を見ると、本沢温泉行きを進めてくれたおじさんが歩いているのが見えた。
あわてて身支度を整え、おじさんの後を追う。
どうやら、足が痛むために速度が出なかったらしい。
丁度僕も休憩直後でゆっくりと歩いていたため、しばらく言葉を交わしながら先へ進む。
とその時、後ろから凄い勢いで抜いていく、初老の男性いた。
こちらの会話が聞こえたらしく、通り過ぎる直前から少し上に上がるまで会話に参加。
せっかちな人だ。
どうやら、彼もこの硫黄岳を登って本沢温泉を目指すとの事。
それにしても速い。
坂の中腹にいたる頃には、もう見えなくなっていた。
坂を登りきると、そのおじさんがさすがに疲れたーと言いながらおにぎりをほおばっていた。
次は必ず、米を持ってこよう。
昨日からまともに固形物を口にしていない。
白米がキラキラと輝いて見える。
そこからはそのおじさんのペースに合わせて話をしつつ凄いスピードで硫黄岳の山頂を通り過ぎ
(この人は写真を撮るのも一瞬だった)
あっという間に夏沢峠に到着した時点でダウン。
彼は僕が赤岳の山頂を出発したぐらいの時間に本沢温泉を下った駐車場に到着して
赤岳まで行って帰ってきてこれだというのだから、世の中広い。
とてもじゃないが、数年前まで喘息を抱えていた50過ぎの人には見えない。
少し寂しそうに、息子も娘も山には興味が無いという話を聞いて
ちょっとだけ、親父が元気なうちに一緒に登ってやらなくてはいけないかな、という気分になった。
実行するのはいつになるかわからないが。
夏沢峠まで来ると、辺りは再び鬱蒼と茂る木々に囲まれた道となる。
普段ならばとても楽しいはずの道のりが、おじさんの置き土産によって
早足で怯えながら歩くことになってしまった。
僕が臆病なだけなのはわかるのだが、何もこれから日が暮れて、薄暗い森に突入する前に
恐怖体験の話をしなくてもよさそうなものだ。
話と言うのはこうだ。
「あなたは、山で不思議な体験をしたことがありますか?
私は、かれこれ50数年生きてきて、一度も幽霊やらおばけやらというのを感じたことは無かったんですよ。
夜道でも懐中電灯一つで山道を歩いたりするぐらいですから。
前に一度、百名山の一つを登っていたときに、群馬の方の山だったと思うんですけれど、
登りは快調だったんですよ。いつもどおりのペースで山の頂上まで行って、
その帰り道です。
その登った山の向かいが、なんていいましたっけ、飛行機の墜落事故のあった。
頂上から下り始めたとき、急に何かに見られているような強烈な視線を感じましてね。
はっとして後ろを振り向いても何もいないんです。当たり前ですけどね。
それからはずーっと何かに見られているような感じが下山している間中ありましてね。
やっぱり、何かあるんでしょうかねぇ。
それからもまた何も感じたことは無いんですけどね。」
別になんということはない話のはずなのだ。
普段ならば。
だが、僕がいるそこは山の中だった。
辺りはシンシンと音が積もっていくような静けさの中、自分の足音だけが聞こえる
そんな森の中なのだ。
何もあるはずは無い。
そう思うことが余計に恐怖心を喚起させることはわかっていても、そうおもわずにはいられなかった。
道中誰にも合わずにいたせいか、徐々に硫黄の香りが強くなってきて、
崖の下に温泉を確認したときの安堵感といったら。

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八ヶ岳縦走(二日目 横岳登頂)
10月 20, 2008, 3:50 pm
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赤岳の山頂には、太陽が一番高い所から少し下がってきた午後1時。
山頂の横にある山小屋の前では皆が思い思いの岩に腰をかけ、お湯を沸かしたり、キュウリをかじったりしていた。
僕はというとカロリーメイトの一袋をあけ、水と一緒に飲み込んだ。

山の稜線は遥か前方に延び、人が歩く場所が白茶けた線となって山頂から山頂へと線を引いていく。
森林限界に到達しているのか、ある地点を過ぎると木と呼べるものはほとんど見かけなくなり、くるぶし辺りまで伸びている草すら稀になっていた。
青々とした下草と白茶けた岩とのコントラスト、それを包む空の青さが、その中に浮かぶ雲の白さがたまらなく美しい。

 

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登り始める前に今夜の宿を、と考えていた赤岳鉱泉を探すと、遥か山の麓の方にそれらしき施設群を発見した。
どうやら、僕は大きな勘違いをしていたようだ。山から下りずに一晩過ごせる場所として、温泉のある赤岳鉱泉に目星をつけていたのだが、一度山を完全に降りなくてはならないらしい。

自分の勘違いであることを祈りつつ、コンパスと地図を見比べる。
残念ながら、今回は自分の勘違いではないようだ。

僕は地図をしまいこみ、肺から一度大きく空気を吐き出すとザックを背負いなおし、赤岳から1時間程のところにあり、
八ヶ岳の中で主峰赤岳に次ぐ高さを持つ横岳へと向かった。

今までの道中と違い、赤岳から横岳への道のりは心躍る岩場の連続だった。
一歩山とは逆の方向に足を踏み出したら、後はそのまま気持ちよく死ぬことが出来そうな、
そんな魅力的な崖が連続して存在していて、もし自殺したくなったらここに着てみようとか、
ここまで来てしまったらもう自殺するつもりなんてなくなっちゃうかな、とか考えていた。
それぐらい、吸い込まれそうな緑の絨毯だった。

 

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いつしか僕も行き違う人たちと、自然に言葉をかけあうようになっていた。

「こんにちは」

「どちらまでいかれるんですか?」

「先に行ってください」

「どちらから?」

「良い眺めですね」

なんのことはない、ごく普通の言葉。
それらがお互いの存在を強く意識させる。
自分が言葉を発する生き物であることを思い出す。
あまりにも大きな存在の中で生まれる一種の連帯感だろうか。

ある岩場に差し掛かったときに僕は辺りが騒がしいことに気がついた。
うわー、とかあー、とか言う声が前後の人たちから上がる。
辺りを見回してみると、
太陽はまだ空の上の方にあり、僕の進行方向の左側、つまりは西側から、強烈な光を放っている。
右側は越えられない壁に苦しむ雲が僕の足元に広がっていた。

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と、そのとき僕の影が何も無い空間の奥に向かって、歩き始めた。
実際には歩いていく訳がないのだけれど、自分の影が、何も無いはずの空間に投影されているのだ。

 

 

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そして歩き始めた影の先端に丸く虹が生まれた。
一瞬の空白の後、湧き上がる感動。
僕の足はしばらく前に進むことを忘れ、手を伸ばせばそのまま虫かごにしまって
持ち帰れそうな景色に見とれた。
実は最初に一瞬現れた時には写真をとることを忘れてしまった。
もう一度、もっと鮮明に見せてくれたのはサービス精神旺盛な太陽のおかげか。

そこからさらに少し歩いた岩場の前で一息入れていると、そこで腰を下ろしていたおじさんに話しかけられた。
僕の倍ほどもあるザックをおろして、水分補給はそこから延びたチューブで行っていることから
彼がこの山に限らず登山を趣味としている人であることは容易にうかがい知ることが出来た。

「どこまでいくの?」

僕はこの質問が苦手だった。何故なら僕には目的地が無いから。

「どこまでいけるか考えてます」

こう答えると、若さをうらやむか、少し顔をしかめるか、どちらかの反応をして会話が終了することは
ここまでの経験で知っていた。だが、彼は違った。

「じゃあ、あんた若いから本沢温泉まで行ったら良いよ。
テン場もあるし、俺もそこいくから。ここからでも5時過ぎには着けるだろ。」

リミットの15時が迫ってきている中、目的地を定めることが出来ていなかった僕にとって
この言葉には大変助けられた。目標の一つとして候補には上げていたものの、
コースレコードを見る限りで日が暮れてしまうため、諦めていた場所のひとつだったのだ。

もう少し休むというおじさんに別れを告げ、進み始めた僕の足取りは思いの他軽くなっていた。
体力があるうちはどこまでいけるのかを考えながら進むのも楽しいのだ。
しかし、目減りする体力と、差し迫る時間とを考えながら目的地を定める、
それも全てが初めての場所で。
これには思いの他やられていたらしい。

 

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その後もいくつか岩場を乗り越え、ようやく横岳に到着したのは行動のリミットとして
きつく言い渡されていた15時のことだった。
一応現実的な範囲で目的地も定まっていたし、山の経験者が大丈夫だと言うのだから、きっと大丈夫なのだろう。

ここから先、本沢温泉に至る道には八ヶ岳で3番目に高い硫黄岳(2,760m)があり、そこから一気に500メートルほど下った
2,150m地点に本沢温泉はある。
日本最高地点にある温泉なのだとか。楽しみだ。

 

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八ヶ岳縦走(二日目 赤岳登頂)
10月 12, 2008, 5:59 pm
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周りの木々の葉に、空の高いところから落ちてくる水とがぶつかって奏でる音を聞いた。そのせいかどうかはわからないけれど、夜中の2時頃に一度目を覚ました。夕方には綺麗な夕焼けを見て、ほぼ完全な円となった月が出ていたのに、今雨が降っていることがとても不思議で、それと同時に自分に屋根のある場所を勧めてくれたおじさん、おばさんに感謝した。自分の体が雨に打たれていない事。それがとてもありがたかった。

そのまま寝なおして、次に目が覚めたのは周囲が段々と紺色から水色に近づく時間だった。5時半頃だっただろうか。昨日の朝は柔らかな布団に包まっていたのに、マットを一枚敷いた上に、上半身は長袖の綿のTシャツ、タートル、厚手のネルシャツ、ウィンドブレーカー、ダウンジャケット、下半身はナイロンのパンツ、ウィンドブレーカー、レインウェアという格好で寝転がっている。とても不思議な満足感があった。ちなみに、孤高の人を読んで実践した中身が空になったザックに足を突っ込むという方法は思いの他足を外気から防いでくれた。

頭は不思議と冴えていて、起きた直後には朝食の準備を始めた。朝食といっても玄米ブランを2枚とワカメスープとチョコレートだけれど。ステンレス製の器に水を張ってワカメのスープを沸かす間にタバコに火を着ける。タバコの先端から生まれる煙を眺めながら、朝の鮮烈な空気と山の音とに浸っていた。

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暖かいワカメスープをすすり、朝食を終えた後は出発の仕度を始めた。思ったよりも気温が低くなかったが、これから上に上っていくことを考えて上下ともに長袖を着用し、残りの衣類や水をザックにつめ直す。荷物が少ないので5分程で出発の準備が整った。後、地図を見て羽衣の池を経由して真教寺尾根に入り、赤岳山頂に向かうことを確認した。

昨日自宅を出発する時はあれほどためらったというのに、山に登ることに全くためらいは無かった。

おじさんやおばさんが居れば挨拶がしたかったのだけれど、まだ辺りは完全に寝静まっていたために誰に言うでもなく感謝と出発の言葉を口にして歩き始めた。

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しばらく歩くとすぐに羽衣池にたどり着いた。もう少し開けた場所を期待していたのだけれど、池というほどの水も見当たらない場所だった。季節を選ぶともう少し羽衣感があるのだろうか。タイトルは忘れてしまったけれど、天女が空から降りて水浴びしているところに出くわして、天に戻って欲しくないから木にかけてあった羽衣を隠してしまった、とかいう昔話があった気がする。そういう意味ではあんまり開けてなくて周囲に木が生えている池の方がいいのか。

まだ15分程度しか歩いていないのに、暑くて汗をかき始めてしまい、丁度荷物を降ろせる場所があったので羽衣池の横で上着を脱いだ。自分の中ではとても早い時間で、そんな時間に人はあまり活動していないだろうと思っていたのだけれど、着替えが終わった時点で同年代か少し上ぐらいのカップルが通過、荷物もつめ終わって一服していたらおじいちゃんおばあちゃんの集団が到着。方言から判断するに広島から来ているようだ。昨日清里の駅周辺で一泊して5時頃出発してきたらしい。山を登る人たちの活動時間は早い。

話をしているうちに昨日たかね荘に泊まった話をすると「それでそんなに荷物が大きい」とか言われてしまい、特に何もキャンプ道具が入っていないことを言い出せなかった。さらに、おじさんの1人に「ちょっと持ってみてもいいですか?」と言われたので持ってもらうと少し驚いた表情で「意外と軽いね~」と言われてしまう。それに対して、その集団のリーダー格の人が今の山道具はどんどん進化してとても軽いという事を説明していたが、ごめんなさい、何も道具が入ってないから軽いんです。

山歩きのペースがつかめていなかったのでだらだらとことさらに意識してゆっくり登ろうと思っていたのだけれど、おじさんおばさんに若くて早いだろうから先に行っちゃってね、と言われて山のぼりが初めてであることも言い出せなくなり、先に出発することに。当面の目標は賽の河原という場所を経由して牛首山の山頂だ。

登り始めると、鬱蒼と茂る笹が道の両サイドからはみ出しており、昨夜の雨の影響もあってか足周りが大分湿ってしまった。次からこういう場所を通過するときは気にしなくてはいけない。地面には真っ白なムカデのような生き物が大量にいた。ちょっと異常な発生量だと思うのだけれど、普通なのだろうか。

基本的には先行する僕をおじーちゃんおばーちゃんが追いかける形なのだけれど、僕が休憩してタバコに火をつけると、吸い終わらないうちに追いつかれる。これには少なからず驚いた。それほど体力があるほうだとも思わないけれど、おそらく50は越えているだろうおじいちゃん達にほとんど差をつけることが出来ないのだ。さすがに歩いていると追いつかれることはないのだけれど。

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賽の河原に到達した。名前から細かい石がたくさんある場所を想像していたのだが、大きめの石がゴロリといくつかある程度でほとんどは土だった。そこの端にまるでパックンフラワーのような巨大なアザミが花を咲かせていた。八ヶ岳に咲くアザミは全てこのサイズなのかと思ったが、後で普通のサイズのものも見かけたので、大きいサイズの種類があるようだ。

どうにか追い抜かされる事無く牛首山の山頂まで到達した。その頃ようやく雲が切れ始め、空は綺麗な青色を見せ始めていた。辺りはまだまだ木が豊富に生えていて、上を見上げてもあまり空を見ることは出来なかったのだけれど、それでも見上げた時にあの青さを見ることが出来ると気持ちが良い。

牛首山の山頂に到達したのが7時30頃。歩き始めて1時間半が経過していたので一度大きく休憩を入れようと荷物を降ろしたところで例の集団に追いつかれた。彼らもここで一度大きく休憩を入れるらしい。リーダー格のおじいちゃんがおもむろにコッヘルと鍋を取り出してお湯を沸かし始める。それぞれにおにぎりやサンドイッチを取り出し始めた。どうやら、朝食のようだ。とても羨ましい。

15分ほど休憩を入れて再度歩き始める。地図の等高線を見る感じであまりアップダウンの無い道を進んでいくのかと思ったら、細かいアップダウンがある。一度登ったのに下るのは少しもったいない気がする。

前回登った富士山は6合目以降ほとんど草木が生えておらず、頭を少し左右に動かせば空を眺めることが出来たのだけれど、ここではそうはいかず、ところどころ崖のような場所を通過するときに空を見ることが出来るものの、ほとんど草木に覆われた道を歩くことになる。自分の来た場所、進んでいく先がわからない道を歩いていくのは少しつらい。さらに、景色がほとんど変化しない。

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ふとした瞬間に帰りたくなる。それでも前に進んでいたのは、前向きな理由ではなくて、今まで歩いてきた道を下るのが嫌だったから。たまに木々の合間から射し込む太陽の光や、苔むした岩、小さく精一杯咲き誇る花を見ることに喜びは感じるのだが、歩き始めて1時間ほどでこのあまり代わり映えのしない道にはすっかり飽きてしまっていた。

少し立ち止まって水分補給したりすると後ろから聞こえてくる広島弁に追い立てられるように前に進んでいたら、いつの間にか周りの木々の背が低くなっていたことに気がついた。アップダウンを繰り返すうちに高度が上がっていたらしい。そのことに気がついた直後、視界の開けた場所に到着した。久しぶりに頭上に空が広がる。

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ふと後ろを眺めた時、自分がとても長い距離移動していることに気がついた。移動してきた場所が山の形をしていることがとても不思議だ。左から来た雲が山に遮られて右側に進めずにいる。遠くから見ると山という塊でしかない存在が、その中にいるときは地面と、木々の幹としか感じることが出来ない。

ついに見えた赤岳の頂上や、横に見える権現岳から赤岳に至る尾根や、自分が歩いてきた尾根。そして木々の緑、雲の白さ、空の青さがあまりに綺麗でこの場所で15分ほど休憩をしていた。その間におじーちゃん達には抜かれてしまった。でも、自分の歩いてきた道を見下ろし、風に吹かれて太陽の光を浴びているのがとても気持ちよくて、動くことが出来なかった。休んでいる間にもう1人、40ぐらいのおじさんがここの景色はすばらしいですね、といいながら通過していった。

ようやく腰を上げて歩き始めたとき、自分が休憩を取りすぎてしまったことに気がついた。体がとても重く、既に登りになっている道を進むのがとても辛い。しばらく歩いているうちに少し楽になったが、あまり長く休憩するのは避けたほうが良い。

ここから先は、進むほどに道は細く険しくなっていった。ただ、幸いにも天気が良かったので見上げれば青空を見ることが出来たし、岩場が増えてきたので徐々にテンションは高かった。

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期待していた鎖場もようやく出現し始めた。それほど急ではなかったのと、鎖が意外と重いので、ほとんど四つんばいになって登ってしまったけれど、地面を歩いているよりも高さが稼げる鎖場は、登った後に下を眺めるととても気持ちが良い。

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道中ずっと左手に見えていたキレットもとても美しい。また、自分の高さを実感するのに一役買ってくれた。初めて見かけたときは遥か上に見えたのに、赤岳の鎖場を通り過ぎるたびに近づいてきて、ついには自分の方が上になっていた。

ようやく赤岳の山頂に到着したのは12時55分。ほぼ地図に書かれているコースレコード通り。景色に見とれている時間を考えれば、コースレコードよりは早いペースで歩いているのだろうと思う。

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赤岳の山頂にはたくさんの人がいた。時間的にも丁度お昼の時間だったのだろう、皆コッヘルでお湯をわかしたり、おにぎりを取り出して食事をしていた。僕もこの山頂で休憩を取りながら、カロリーメイトを2本口に入れた。装備はともかくとして、次はきちんと食料を持っていこう。富士山で人にわけてもらったおにぎりでその大事さは実感していたはずなのだけど。

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八ヶ岳縦走(初日)
10月 2, 2008, 4:35 pm
Filed under: mountaineering, 八ヶ岳 | タグ: , ,

いつだって、それが今、この時じゃなくちゃならないなんてことはなかなか無いんだ。
ましてやそれが、新しい趣味をちょっと始めてみようという場合には。
初めてやることが、期待した通りの適度な喜びや興奮を与えてくれるかどうか
そんなことは誰にも分からない。
だからこそ始めてみる価値があるってーもんじゃないのか。
もちろん、その通りだ。
ある一面で言えば。
逆の立場で言えば、期待した通りの適度な喜びや興奮を与えてくれるかどうかわからない
未体験のことをやるよりも
いつも通りのルーティンに従って行動する方がコストも少なくてすむし、何より裏切りってもんに出会わなくてすむ。
まぁ、それがコストが少なくてすむってことだけれど。
何が言いたいかというと、初めて山登りに行こうとした日の朝なんて
出来る限り布団の中にもぐっていたいってこと。
「山に行ったら15時が行動のリミット」
昔は良く山に行っていたという親父に何度も言われて
明かりの無い場所で、夜がどれだけ暗くて、行動に危険が伴うかぐらい、わかってるよ。
そう思いながらも、直前まで自分が本当に行くのかなー、と他人事のように思っていたりする。
そんな時、周りの人間に何をするのか伝えておくってのは大事だ。
いつの間にか、自分以外の全員は、僕を見送る準備が完璧に出来ていたりする。
月末に近づけば近づくほど、ATMに表示される数字が0に近くなっていくけれど、
今月は一応交通費と、いざとなれば山小屋に逃げ込める程度には残しておいた。
結局、出発するしかないと諦めて
街中で背負うには大きすぎるリュックになるべく暖かそうな服を詰め込んで
家を出発したのが午前10時。
山が好きな人にこんなことを言ったら、怒られるんじゃなかろうか。
それでも、自分の意思で行く、人生二度目の登山はこうして始まった。
ちなみに、自分の意思で行った一度目の山は富士山。
ただ、この山は頂上に土産を売っていたり、夜になると登山者のヘッドライトがまるで天の川のようだったり
いわゆる「山」ってのとは違うんじゃないかなー、と思うから
まぁ、今回を人生初の登山と言っておいてもいいんじゃないかと思ってる。
1人で行くのは初めてだから、そういう意味でなら初だしね。
話を戻して、そんな感じで家をようやくに出発したわけだけれど
世の中的にはまだまだ夏で、慣れない重荷を背負って、富士山で購入した麦藁帽子をかぶって
駅についた頃にはすっかり汗だくになってた。
もうタオル1枚と下着とTシャツがおじゃんになりそうな勢い。
山に登るとき、着替えを最小限に抑えたほうが荷物が軽くなって良いと思うのだけれど
歩いたら汗だくになるだろうし、やっぱり途中で干すのかなー、とか考えてた。(これは翌日実行した)
駅まで付いてしまえば、後はぶらり途中乗り換え各駅停車5時間。
さらに山が好きな人には怒られそうなことに、なんとPSP持参。
行きは延々モンハンをやってたり。一応本も1冊持っていったのだけれど
行きで本を読み終わってしまったら、持っているのが悲しくなりそうだから、あまり読まないようにした。
充電が無くなったPSPの方がよほど悲しいのじゃないか、という説が濃厚だけれど
悲しきゲーマーの性なのです。
話は全然変わるけれど、僕は長距離電車に乗ると、ゆで卵が食べたくなる。
何故かはわからないけれど、あの卵黄が丁度良い具合にオレンジ色で、2個で100円ぐらいで売っているゆで卵が
無性に食べたくなる。
昔懐かし遠足のお弁当の記憶なのか。
昔からゆで卵は大好物だったから、きっと僕のお弁当には、痛むんじゃないかと心配しながらも
母親はゆで卵を入れてくれたに違いない。
薄々気がついてはいたのだけれど、目的地の清里駅に到着した時には既に15時をまわっていた。
地図

これが移動経路。
桜新町(田園都市線)→溝口(南武線)→立川(中央本線)→小淵沢(八ヶ岳高原線)→清里)
こうしてみるとたった5時間でこんなに移動してるって結構すごい。
さて、こうして清里駅についてしまった。
着いてしまった、なんていうと物凄く他人事のようだけれど、ちょっとだけ奮起して電車に乗ってしまったら
後はPSPでモンハンをやっていたら清里駅に到着していたのだから、それは仕方が無い。
着いてしまったものは仕方が無いし、テントも寝袋も無い僕にとって寝場所を確保できないのは生死に関わる。
でも、折角普段よりコストをかけて動いているのだから
人があんまりいないところがいいな、と思ってしまうのは贅沢というものだろうか。
きっと「もったいない」の精神だと思う。
それに、野宿なのだからあんまり人がいない場所の方が受け入れてもらえそうな気もする。
とか考えながらしばらく地図を眺めていた。
さすがにここまで来たら明日は早朝から八ヶ岳に登るのだろうし、なるべく効率よく動きたい。
では八ヶ岳に向かってしまえばいいのではないか。
じゃあ、どんなルートで登ろうか、と考えたら
美し森という場所を少し越えたところにたかね荘という宿泊地とキャンプ場を発見。
いくら多少無理をしに来たとはいえ
山初めて
ソロ
装備ほぼ無し
という状態だし、死にたくないし。出来れば風邪もひきたくない。
そうなると、基本方針は「親切な人に助けてもらう」になる。
でも多少は無理したい。
結局、キャンプ場が安定なのではないか、という結論に至ってここからは足取りも軽く
一路たかね荘へ。
000

美し森に着くまでは基本的にアスファルトの道だった。
すでに若干肌寒くなっていて、ほとんど車は通らない。
まだ全然高い場所に来ていないのに、既に「高地では15分置きに休んで、1時間で大きめの休憩」等と考えていた。
そんな自分を多少可愛く思いつつ、結局あまり休まずに1時間程度で美し森には到着した。
そもそも、ここまできた道路の脇も全て森だったし、特別このエリアに入って木の種類が変わったとも思えないのに
どうしてここは美し森というのだろうか。
一応観光案内所というのがあったので、そこにいたおじちゃんに赤岳の方向を確認すると
不思議そうな顔をされて、分からないといわれた。
どうやら八ヶ岳は観光案内所では扱わないらしい。
案内所の中には八ヶ岳の模型や壁一面に地図が張り出されていたから、勝手に見ればいいだろうという事だったのかもしれない。
ちょっと悔しかったので、横に併設されていたおみやげ物やで試食品を食べ歩いた。
これで1食ぐらいは浮いた。
012

少し道を登っていくと、当たり前の話だけれど自分が高い位置に来ているのを実感する。
まだまだ道は整備されているし、人里離れているとは言いがたいけれど、富士山に比べれば人は全くいない。
観光案内所もあったように、ここは観光地であるらしい。
たまにカップルがいたり、どうみてもギャル男の集団がいたりした。
観光案内所から1時間程も木に囲まれた道を歩いたところ、たかね荘に到着した。
立派な宿泊施設があったのでここでも試食品を頂きつつキャンプ場の隅っこで寝ても良いかとおばちゃんに聞いた。
テントを張りたいのか、と聞かれたのでテントも寝袋も無いといったら予想以上に驚かれた。
料金設定にもかなり悩んでいたが、結局風呂付で1500円という事になった。
さらに、キャンプ場の管理人のおじさんに「テントも寝袋もないんだってさー、案内してやってよ!」と紹介され
親切なおじさんは目を丸くしながら今夜は人がいないというロッジの玄関を案内してくれた。
025

天気も良いし、晴れていたので、まさか雨が降るとは思っていなかったのだが
素直に好意に甘えることにして風呂に入り、夕飯として五穀米のスープを食べて終了。
食料さえも満足に無かったりする。
チョコレートは偉大だ。

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